個人事業主で自宅を事務所として利用している場合、家賃の一部を必要経費に計上することが可能です。家賃の一部を経費にすることで、所得税や住民税、国民健康保険料などの負担を軽減することができます。ここでは、事務所兼自宅の家賃の一部を経費にできる「家事按分」をご紹介します。
家事按分とは
個人事業主やフリーランスの場合「どの費用が事業の経費」で「どの費用がプライベートなもの」なのか判断が難しいものがあります。事業に関連があるものは問題なく経費になりますが、事業にもプライベートにも関連のある費用の場合は、合理的な基準で事業部分とプライベートな部分を区分することで事業部分を経費にすることが可能です。このように按分計算によって事業とプライベートに費用を按分することを「家事按分」と言います。
家事按分する方法
自宅の一部を事業のオフィスや作業場として利用している場合の家賃や水道光熱費、インターネット代などは家事按分することが可能です。合理的に事業部分とプライベート部分を按分するには、次の計算方法で行います。
家賃を家事按分する方法
家賃の家事按分は「客観的かつ合理的」に説明できる方法で計算しなければ認められません。そのため、次の2つのどちらかの計算式で行うといいでしょう。
①面積で按分
事業で使用している部分の面積を測り、プライベートで使用する部分で按分計算する方法です。例えば、家賃20万円、総面積80㎡の自宅の1部屋(20㎡)を事業で使用している場合の家賃の家事按分は次のようになります。
家賃200,000円×事業に使用する面積20㎡÷全体の面積80㎡=家賃の家事按分50,000円
この例では、家賃の家事按分により50,000円を経費にすることができます。
自宅で作業しているときにも利用するトイレや廊下などの共有部分についても家事按分することができます。例えば先ほどの例に共用部分が10㎡あった場合は、次の計算式により家事按分を算出します。
事業に使用する面積20㎡÷(全体の面積80㎡-共用部分10㎡)×共有部分10㎡≒2.85㎡
家賃200,000円×(事業に使用する面積20㎡+共用部分の事業部分2.85㎡)÷全体の面積80㎡=家賃の家事按分57,125円
共用部分の事業部分を計上することで57,125円の家賃を家事按分として経費にすることができます。
②時間で按分する
ワンルームマンションなどの場合は、面積で按分することができません。この場合は、事業で使用した時間により家事按分を計算します。例えば、家賃10万円のワンルームマンションで1日9時間、月20日間(ひと月を30日として計算)を事業に使用した場合の計算式は次のとおりです。
家賃100,000円×(9時間×20日÷24時間×30日)=家賃の家事按分25,000円
この例では、家賃の家事按分により25,000円を経費にすることができます。
家賃を家事按分する際の注意点
家賃を家事按分する際は次の点に注意しましょう。
・白色申告では50%を事業割合が超えなければならない
白色申告では「白色申告者の50%ルール」があります。これは「家賃などの家事関連費について事業割合が50%を超えなければ経費にすることができない」というルールです。合理的に家事按分を行っていても50%以下であれば経費として認められませんので注意が必要です。
・敷金は家事按分できない
入居時に支払う敷金は原則的に退去時に返金される性質のものであるため、家事按分して経費にすることができません。礼金については20万未満の場合であれば家事按分することができます。礼金が20万円以上の場合は減価償却する必要があります。
・持ち家は減価償却で経費にする
持ち家の一部を事業に使用している場合で、住宅ローンを支払っている場合は住宅ローンの支払いを家事按分することはできません。ただし、持ち家の取得価額を資産に計上し、減価償却費のうち事業割合を経費にすることができます。
・資料を保管する
客観的で合理的に家事按分を行っている根拠を保管しておきましょう。面積や家賃の金額のわかる賃貸借契約書や支払いが証明できる書類、家事按分の計算式などの資料が家事按分を証明できる書類になります。
まとめ
今回は「家賃の家事按分」についてご紹介しました。自宅の一部を事業に使用している場合は家賃の一部を経費にすることが可能です。ただし、合理的に計算根拠が必要になりますので、ここでご紹介した方法で計算してみてはいかがでしょうか。当事務所では、個人事業の確定申告のご相談を承っております。お気軽にご相談ください。
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