令和元年10月より消費税が8%から10%に引き上げられました。消費税は消費一般に広く公平に課税する「間接税」です。消費者が負担し事業者が納税する仕組みになっており、取引の各段階で標準税率10%(国税7.8%、地方税2.2%)または軽減税率8%(国税6.24%、地方税1.76%)が課税されます。ここでは、消費税はどのような仕組みで納税されるかご紹介します。
消費税の負担者は最終消費者
消費税の納税義務者は法人や個人事業主などの事業者ですが、事業者が消費税を負担しているわけではありません。消費税は事業者が販売する商品や提供するサービスの価格に含まれ、取引ごとに転嫁(税の転嫁)されていき、最終的に商品を購入、またはサービスの提供を受けた最終消費者が消費税を負担することになります。
商品の流れと消費税の流れは次のようになります。
最終消費者が負担した消費税を工場などの各事業者が納税します。
消費税を負担する者=消費者
消費税を申告・納付する者=事業者
原則的な消費税の計算方法「原則課税」
原則的な消費税の仕組みは、(課税)売上高にかかる消費税から(課税)仕入高にかかる消費税を差引いた金額を申告・納付を行います。要は、売り上げたときに一緒にお客様から頂く消費税から、仕入や経費を払う際に一緒に払った消費税を差し引いて、残った消費税を税務署に支払う、ということです。
上記図の「商社」の立場で考えてみましょう。
「商社」では、「小売店」へ商品を売上たとき、売上といっしょに消費税20円を受け取ります。
一方、「工場」から商品を仕入れたとき、仕入といっしょに消費税10円を支払います。
とすると、「商社」では、売上たときに消費税20円を受け取り、仕入れたときに消費税10円を支払っているため、「商社」の手元には、消費税10円が残ることになります。
この手元に残った消費税10円を、税務署に申告・納付するわけです。
この計算方法を、原則的な消費税の計算方法という意味で「原則課税」といいます。
消費税の納付税額=売上高にかかる消費税-仕入高にかかる消費税
例外的な消費税の計算方法「簡易課税」
上記の「原則課税」の他に「簡易課税」という消費税の計算方法があります。
簡易課税は、実際の仕入高にかかる消費税に関係なく、課税売上高により納付する消費税額を計算する方法です。簡易課税では、課税売上等に係る消費税額の一定割合を仕入控除税額(みなし仕入)にします。みなし仕入率は業種ごとに設定されており、40~90%になっています。
簡易課税の適用を選択するには、次2つの要件があります。
①2期前の事業年度の課税売上高が5,000万円以下であること。
②「消費税簡易課税制度選択届出書」を「その適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日」までに提出すること。
※簡易課税の適用を選択すると、適用した年度から原則として2年間、原則課税に変更することはできません。2年経過後に簡易課税をとりやめて原則課税に変更する場合は、やめようとする課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。
簡易課税による消費税納付額の計算例
卸売業(第一種事業 みなし仕入率90%)に該当する会社の簡易課税を適用した消費税の計算は、次のようになります。
①課税売上高にかかる消費税
課税売上高(標準税率10%)25,000,000円 25,000,000×10%=2,500,000円
課税売上高(軽減税率8%)10,000,000円 10,000,000円×8%=800,000円
課税売上高にかかる消費税額合計3,300,000円(A)
②経費等にかかる消費税額
(A)×みなし仕入率90%=経費等にかかる消費税額(B)
3,300,000円×90%=2,970,000円(B)
③納付すべき消費税額
(A)-(B)
3,300,000円-2,970,000円=330,000円
まとめ
事業者の消費税の計算方法は原則課税と簡易課税で大きく納税額が異なります。簡易課税を一度選択したら2年間継続しなければならないため、事業計画を考慮してどちらの計算方法を選択するか検討する必要があります。
特に、サービス業などで、簡易課税を選択した方が圧倒的に消費税が安くなる方がおられます。消費税がかかる前にシミュレーションをして、原則課税と簡易課税のどちらが有利か、検討しましょう。
どちらの計算方法が自社に適した方法かお悩みの場合は、当事務所にお気軽にご相談ください。
Comments